特別教育について

事業者と労働者の責務

昭和47年に公布された「労働安全衛生法」の総則には労働災害を防止する為の事業者と労働者の基本的な関係と責務が決められています。
それによりますと、事業者の責務とは労働者の安全と健康を確保するためのあらゆる措置を構じなければならないということです。労働者を雇い入れたとき又は作業内容を変更したときに行う安全衛生教育はその一環です。一方労働者は労働災害を防止するために必要な事項を守るほか、事業者の実施する労働災害の防止に関する措置に協力しなければなりません。このような事業者と労働者の基本的な関係を理解し、互いの立場を尊重した上で一致協力して労働災害の防止に取り組むことが一番大切なことではないかと考えます。

なぜ特別教育が必要なのか?

研削盤作業員がといし取付けに関して知っていなければならない事項は?
『研削といしの取替え又は取替え時の試運転の業務』は厚生労働省令により「危険又は有害な業務」に指定されています。(安衛則第36条)
事業者は労働者を厚生労働省令で定める「危険又は有害な業務」につかせるときは、一般の安全衛生教育ばかりでなく当該業務に関する特別の教育を行わなければなりません。(安衛法第59条第3項)
事業者が労働者を研削作業につかせれば、当該研削作業ばかりでなく研削といしの取替えや試運転の業務も行うことになります。事業者は労働者に対し特別教育を行った上で、十分な知識及び技能を有すると認めた者、いわゆる有資格者を研削といしの取替、又は試運転の業務につかせなければならないのです。

といしの取替えや試運転の業務はそんなに危険なのですか?

研削といしの取替えや取替え時の試運転の業務そのものは、それほど危険なことではありません。といしを取替える時のといしの選定間違いや試運転を怠ったりしたことの結果が危険又は有害な事態を招く場合が有ります。
ですから、逆に考えればといしを正しく選定することが出来て、試運転を正しく行えば研削作業は本当に安全な作業だと言えるのです。

研削といしの事故を防ぐにはどうしたらいいのですか?

まず特別教育によって研削盤やといしについての十分な知識と技能を習得し、といしは周速を上げて行けば必ず破壊するということを知り、研削盤やといしを安易に取り扱うことが如何に危険であるかを認識することが一番大切なことだと思います。
その上で次の事項を守ることでかなりの事故を防ぐことが出来ます。

  1. 使用する研削盤に適合したといしを選定する
  2. 研削といしの覆いを取り付けて作業する(安衛則第117条)
  3. 試運転を行い異常の有無を確認する(安衛則第118条)
  4. といしに表示されている最高使用周速度を超えて使用してはならない(安衛則第119条)
  5. といしの正しい使用面を使って作業をする(安衛則第120条)

特別教育はどのようにするのですか?

特別教育は事業者が労働者を一般的な業務より危険度や有害度の高い業務で厚生労働省令で「危険又は有害な業務」に指定されている業務につかせる場合、その労働者に対して行わなければならないもので、教育時間や内容は「安全衛生特別教育規定」に細かく決められています。

安全衛生特別教育規程(抄)

第2条
労働安全衛生規則(以下「安衛則」という。)第36条第1号に掲げる業務のうち自由研削用といしの取替え又は取替え時の試運転の業務に係る特別教育は、学科教育及び実技教育により行なうものとする。

②前項の学科教育は、次の表の上欄(編注・左欄)に掲げる科目に応じ、それぞれ、同表の中欄に掲げる範囲について同表の下欄(編注・右欄)に掲げる時間以上行なうものとする。

科目 範囲 時間
自由研削用研削盤、自由研削用といし、取付け具等に関する知識 自由研削用研削盤の種類及び構造並びにその取扱い方法 自由研削用といしの種類、構成、表示及び安全度並びにその取扱い方法 取付け具 覆い 保護具 2時間
自由研削用といしの取付け方法及び試運転の方法に関する知識 自由研削用研削盤と自由研削用といしとの適合確認 自由研削用といしの外観検査及び打音検査 取付け具の締付け方法及び締付け力 バランスの取り方 試運転の方法 1時間
関係法令 法、令及び安衛則中の関係条項 1時間

③第1項の実技教育は、自由研削用といしの取付け方法及び試運転の方法について、2時間以上行なうものとする。